京都市右京区太秦帷子ノ辻にあります「やわら整骨院」です。
パーキンソン病と言われ、日々リハビリに励まれている皆様、あるいはそのご家族様。日常生活の中で、このように「壁」に直面してはいませんか?
・「以前に比べて、明らかに歩幅が狭くなり、ちょこちょこ歩きになってしまう」
・「最初の一歩が地面に吸い付いたように出ない(すくみ足)
・「一度歩き出すと止まらなくなって、体がどんどん前に倒れてしまう(突進歩行)」
・「薬を飲んでいても、日によって、あるいは時間停によって動けなくなる不安がある」
こうした症状に直面したとき、真面目な方ほど「もっと歩く練習をして、足の筋力を鍛えなければならない」と考え、懸命にトレーニングに励まれます。しかし、現場で多くの方を見てきた
経験から申し上げますと、パーキンソン病による歩行の悩みは、足の筋力を鍛えるだけでは根本的な解決に至りません。
なぜなら、パーキンソン病による運動障害の本質は筋肉そのものの問題ではなく、脳が出す「動きの指令(大きなリズム)」がうまく身体に伝わらなくなっていることにあるからです。
今回は、パーキンソン病特有の「歩きにくさ」の正体と、身体の土台である骨盤からアプローチする重要性について、解説していきたいと思います。
脳内の「指揮者」が戸惑っている状態

私たちの動作は、脳にある「大脳基底核(だいのうきていかく)」という場所が司令塔となってコントロールされています。ここは、動きの「大きさ」や「リズム」を絶妙に調整する、
いわゆるオーケストラの指揮者のような役割を担っています。パーキンソン病になると、脳内のドーパミンという物質が減少することで、この指揮者が適切なタクトを振れなくなります。
その結果、本人は心の中で「大きく歩こう」と思っているのに、実際に出る指令は「小さな一歩」になってしまったり、スムーズに足を出すリズムが刻めなくなったりします。
これが、小刻み歩行や、すり足の原因です。足の筋肉そのものが衰えたわけではなく、脳からの「正しい大きさの指令」が届かないために、筋肉という楽器を十分に鳴らしきれていない状態なのです。
この「指令の弱さ」を無視して筋肉だけを鍛えても、動きのぎこちなさはなかなか解消されません。
脳内にある「身体図式の地図」:身体図式の重要性

ここで、パーキンソン病の動きを理解するために非常に重要なキーワードをお伝えします。それは、脳内にある自分の体の地図、専門用語で「身体図式(しんたいずしき)」と呼ばれるものです。
私たちは、目をつぶっていても、自分の手が今どこにあって、足がどの方向を向いているか分かると思います。それは、脳の中に自分の体の各パーツの位置や大きさを正確に把握するための
「地図」がリアルタイムで更新されているからです。パーキンソン病の大きな特徴の一つに、この脳内の地図が「実際よりも小さく書き換えられてしまう」という現象があります。
脳の中では「全力で大きく動いているつもり」でも、縮小された地図に基づいているため、現実には非常に小さな動きになってしまいます。
また、身体の柔軟性が失われ、背中や腰が丸まって固まってくると、地図上の「関節の可動域」もどんどん狭まって表示されます。すると、脳は「これ以上動かしたら危ない」と過剰に判断して、
動きをさらに制限してしまい、より身体が固まるという負のスパイラルに陥るのです。
リハビリとは、この「縮んでしまった脳内の地図」のピントを合わせ直し、本来の広さに戻していく作業でもあります。
ジャイロセンサー(骨盤)の重要性:なぜ前傾姿勢になるのか
パーキンソン病の方に多く見られるのが、独特の前屈み姿勢です。これは、身体の土台である
「骨盤」が後ろに倒れ(後傾)、それに対して頭を前に出してなんとかバランスを取ろうとする結果です。
骨盤は身体の「ジャイロセンサー(平衡感覚を司るセンサー)です。骨盤が正しいいちにないと、脳は「自分の重心が今どこにあるのか?」という現在地を正確に把握できなくなります。自分の居場所がわからない状態で一歩踏み出すのは、暗闇を歩くようなもので、誰だって怖いものです。
その恐怖心から、脳は「足を浮かせる時間をできるだけ短くしよう(=すぐ地面に着こう)」と判断し、結果として「すり足」になります。すり足を直すためには、足を高くあげる
練習よりも先に、ジャイロセンサーである骨盤を整え、脳に「今、重心はここにあるから大丈夫だ」と安心させてあげることが不可欠なのです。
土台が安定すれば、脳は自然と「足を降り出してもいいよ」という許可を出してくれます。
外部のリズムを借りる:脳の回路をバイパスする
パーキンソン病のリハビリにおいて、非常に興味深い、そして希望となる現象があります。
・「普通には歩きにくいのに、階段ならスイスイ上がれる」
・「床に線が引いてあると、それをまたぐように大きく歩ける」
・「メトロノームの音に合わせて歩くと、スムーズに足がでる」
これは、パーキンソン病でダメージを受けている「無意識に、自動的に動くための脳の回路」ではなく、視覚や聴覚といった「意識的な外部の情報」を使う別の回路(バイパス路)を脳が利用しているからです。
これを、日常生活に活用しない手はありません。
例えば、ご自宅で廊下に一定間隔で目印のテープを貼ってみる。あるいは、歩くときに自分の心の中で、あるいは、隣にいるご家族が「イチ、ニ、イチ、二」と一定のリズムを刻んであげる。
こうした「外部からのきっかけ」を脳に届けることで、正しい動きの指令を身体に送ることができるようになります。
今日から意識したい「脳と身体を繋ぎ直す」3つのポイント
無理な筋トレをして身体を疲れさせるのではなく、脳と身体の連携を取り戻るための具体的なポイントをお伝えします。
オーバーな動きを脳に再学習させる

小さな動きが当たり前になると、脳内の「身体の地図」はそのまま縮んで固まったまま、これ以上無理というくらい大きく腕を広げたり、膝を高くあげる運動をしたりしてください。
「これくらい大きく動いても大丈夫なんだ」という感覚を脳にフィードバックすることが、地図を広げる訓練になります。
足の裏全体で「地面の感触」を味わう

パーキンソン病の方は、つま先に重心が寄りやすく、足の裏の感覚が鈍くなりがちです。
椅子に座っているとき、踵がしっかり地面に着いているか、足の指先はどこに触れているか。
その「感触」をじっくり意識するだけで、脳への情報量が増え、姿勢を制御するスイッチが入りやすくなります。足の裏の感触をじっくり自分で観察し、動かしながらやってみてください。
骨盤の「ゆとり」を確保する

骨盤がガチガチに固まると、そこから発信されるセンサー情報が濁ってしまいます。
座った状態で、お尻を左右交互に浮かせるような小さな運動から始めてんみてください。
土台に「ゆとり(遊び)」ができると、脳が重心の移動を感知しやすくなり、歩行の安定感が変わってきます。両足をつきながら、お尻(坐骨)を片方ずつ浮かし、その後慣れてくると図のように大きく浮かす事もしてみてください。
ご家族の方へ:リハビリを支える「安心感」という特効薬

パーキンソン病の方にとって、一番の大敵は「焦り」と「緊張」です。
「早く歩いて」「ちゃんと足を上げて」という励ましの声かけが、時として脳に過度なプレッシャーを与え、逆に身体をガチガチに固くさせてしまうことがあります。
大切なのは、その方のペースに寄り添い、「リズム」を共有することです。一緒に手拍子をしたり、好きな音楽を流したりして、リラックスした環境を作って上げてください。
心が緩むと、脳からの指令も通りやすくなります。ご家族の笑顔と「大丈夫だよ」という安心感が、どんなリハビリ機器よりもサポートになることが多々あるのです。
パーキンソン病との向き合い方は、長期戦です。「前のように動けない」と自分を責め、焦って無理なトレーニングを課すことは、かえって身体の緊張を強め、動きを固くしてしまう原因にもなりかねません。
大切なのは、筋肉を力でねじ伏せることではなく、脳と身体を繋ぎ直すこと。
そして、そのための大前提として「骨盤という土台」が整っていることです。
「一歩目が出なくて、外に出るのが不安になってしまった」
「姿勢がどんどん崩れていくのを、ただ見ているのが辛い」
もしあなたが、そんな風に立ち止まっているのなら、視点を変えて見てください。
筋肉ではなく、脳内の「身体の地図」をどう書き換えるか。
センサーである骨盤をどう整えるか。
京都市右京区太秦帷子ノ辻の「やわら整骨院」では、こうした身体の連動性を見極め、
皆様が少しでも楽に、自分らしく動けるようになるためのお手伝いをしています。
身体は、正しい接し方をすれば、必ず応えてくれます。
あなたのその「歩きたい」という強い意志を、私たちは専門家として全力で支えます。







